エコキュート累計出荷台数「1000万台」突破|省エネとこれからの未来を考える

2025年3月末時点で、エコキュートの累計出荷台数が1000万台を突破したと、日本冷凍空調工業会とヒートポンプ・蓄熱センターが発表しました。(※国内累計出荷台数(一社)日本冷凍空調工業会 統計 2025.3 現在)
エコキュートは空気中の熱を利用してお湯を沸かす給湯機で、ガス給湯器や電気温水器と比べると光熱費を大きく節約できるのが特徴です。
本記事では、エコキュートが累計出荷台数1000万台を超えた背景や、カーボンニュートラル(脱炭素化)の展望と課題を紹介します。
エコキュート累計「1000万台」突破の背景と推移
エコキュートは2001年の発売以降、家庭用給湯機として着実に普及しました。
冒頭にも述べた通り、累計出荷台数は2025年3月末に1000万台を超えています。
エコキュートが発売された2001年度初期は年間数千台の出荷にとどまっていましたが、省エネ性能の高さが評価されて徐々に拡大し、2007年には100万台を突破しました。
近年は年間60万~70万台を安定的に出荷している状況です。
消費者の省エネ志向の高まりや太陽光発電との連携がさらにエコキュートの普及に拍車をかけていると見られています。
エコキュートの主要メーカーと販売体制
エコキュートの市場には、主にダイキン、パナソニック、コロナ、日立、東芝、三菱電機の6社が参入しています。
各社は、タンク容量やヒートポンプ効率、設置スペースの違いなどを強みとしてアピールし、幅広いニーズに応える製品ラインナップを展開しています。
エコキュートは、専門店や住宅設備会社、電機量販店などで販売されており、気軽に入手できるようになりました。
また、オンライン相談窓口やショールームを活用した顧客接点の機会も増えており、今後もさらに市場拡大が見込まれます。
メーカー間の競争が技術革新を促し、省エネ性能や静音性、耐久性が向上し続けている点も市場拡大を後押ししていると考えられます。
エコキュート1000万台を超えた社会的・環境的意義
エコキュートが累計1000万台を突破したことは、日本の家庭部門における省エネ・脱炭素化(カーボンニュートラル)において大きな意義があります。
従来型のガス給湯器や石油給湯器からエコキュートへの置き換えが進むことで、社会全体のCO2排出量削減やエネルギー自給率の向上に貢献していることは間違いありません。
さらに、ヒートポンプ技術の普及は、再生可能エネルギーの有効活用やカーボンニュートラルの実現にも繋がっています。
本章では、CO2削減効果、エネルギー自給率への影響、そして家庭部門の脱炭素化におけるエコキュートの役割について詳しく解説します。
CO2削減効果とカーボンニュートラルへの貢献
エコキュートは、環境的な視点において、従来のガス給湯器や石油給湯器と比較した際にCO2排出量を大幅に削減できることが最大の特長です。
実際に、エコキュートのCO2排出量は、ガス給湯器の約6割程度に抑えられるとされており、1000万台が全て従来型から置き換わった場合、年間で約379万トンものCO2排出削減効果があるとされています。
この数字は、家庭部門全体の脱炭素化に直結するだけでなく、日本が掲げる2050年カーボンニュートラルの目標実現にも大きく貢献し、今後さらに普及が進めば、その環境効果は一層高まると期待されています。
エネルギー自給率向上へのインパクト
エコキュートは、ヒートポンプ技術により大気中の熱を利用して効率的にお湯を沸かします。
投入した電気エネルギーの3倍以上の熱エネルギーを得られるため、省エネ性が非常に高いことが特徴です。
また、太陽光発電などの再生可能エネルギーと組み合わせることで、家庭内でのエネルギー自給率を大きく高めることが可能です。
夜間電力や余剰電力の活用も進み、エネルギーの地産地消や需給バランスの安定にも貢献すると期待が高まっています。
家庭部門の脱炭素化におけるエコキュートの役割
私たちの家庭で使用するエネルギー消費の中で、給湯は非常に大きな割合を占めています。
エコキュートの普及は、家庭部門のCO2排出量を大幅に削減する大きなポイントとなっており、ヒートポンプ技術は今後の脱炭素化政策においても現実的かつ効果的な手段です。
また、国のエネルギー政策でも重要な位置づけとなっており、今後は戸建てだけでなく集合住宅やリフォーム市場への普及拡大を目指しています。
エコキュートの今後の展望と課題
冒頭で述べた通り、エコキュートは累計出荷台数1000万台を突破し、家庭部門の省エネ・脱炭素化を牽引してきました。
しかし、今後のさらなるエコキュートの普及にはいくつかの課題があります。
特に、戸建て住宅に比べて普及が遅れている集合住宅への展開、2050年カーボンニュートラル目標の達成に向けた導入台数の拡大、そして業界・行政・消費者の連携強化が求められます。
本章では、エコキュートの今後の展望と課題について、集合住宅への拡大、長期目標と必要台数、そして各ステークホルダーへの期待と取り組みの方向性を詳しく解説します。
集合住宅の普及率
エコキュートの普及は主に戸建て住宅で進んできましたが、集合住宅では普及率が依然として低い状況です。
環境省の調査によると、戸建て住宅でのエコキュート使用率が24.1%であるのに対し、集合住宅ではわずか3.3%にとどまっています。(参考:新築集合住宅におけるヒートポンプ給湯機普及促進策検討報告書|一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター)
集合住宅では設置スペースや重量、既存設備の交換制約などが障壁となりやすく、一度設置された給湯機器が長期間交換されにくい「ロックイン」現象も見られます。
今後は、新築集合住宅での標準採用や、小型・軽量化モデルの開発、補助金制度の活用などが拡大のポイントになると想定されるでしょう。
2050年カーボンニュートラル目標と普及必要台数
日本政府は2050年のカーボンニュートラル実現を掲げており、家庭部門の給湯分野の電化・高効率化が重要な柱とされています。
エコキュートについては、2050年までに約3,650万台の普及が目標とされており、これは現在の1000万台から約3.5倍に拡大する計画であり、今後25年間で毎年約100万台以上の導入が必要となります。(参考:新築集合住宅におけるヒートポンプ給湯機普及促進策検討報告書|一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センター)
寒冷地や集合住宅など普及が進みにくい分野への対応策も求められ、政府や業界は補助金や規制緩和、周知広報など多様な施策を展開していることから、エコキュートのさらなる普及へ力を入れているのが分かりますね。
業界・行政・消費者への期待と今後の取り組み
今後のエコキュート普及には、業界・行政・消費者が一体となった取り組みが欠かせません。
各メーカーは集合住宅向けの小型・高効率モデルの開発や、再生可能エネルギーとの連携強化を進めています。
また、行政は「給湯省エネ2025事業」などの補助金制度や、省エネ基準の強化、普及啓発活動を推進しています。
「給湯省エネ2025事業」については、以下の記事で分かりやすく解説していますのでご覧ください。
関連記事:【最新版】エコキュート補助金「給湯省エネ2025事業」を徹底解説!
消費者は、光熱費削減や災害時のレジリエンス(対処能力)向上といったメリットを理解し、積極的な導入検討が期待されます。
今後も各ステークホルダーが連携し、技術革新や制度設計を進めることで、エコキュートの普及と日本全体のカーボンニュートラルが加速していくでしょう。
まとめ|1000万台は通過点!エコキュートのさらなる普及に期待
エコキュートは累計1000万台突破で家庭部門の省エネとカーボンニュートラルに大きく貢献しました。
今後は2050年カーボンニュートラル実現に向けてさらなる普及拡大と技術革新が求められます。
特に集合住宅での導入拡大は一番の課題であり、目標達成に大きく関わります。
各メーカーの開発と更なる技術革新が期待されますね。